国境の吊り橋

ダンタレス
この激流を越えれば アスピニア・・・
我が共和国の大陸に戻れる訳ですね。
ジュリアンの姿はありませんね・・・
やはり激流に飲まれたのでしょうか?
シンビオス
・・・・・・。
ベネトレイム
この川は国境線の川と同一の水源だが
特に滝つぼの辺りが最も急流にあたる
この流れだ・・・もはや追いつけぬな。
ガーゼル
くく 探し物かね 共和国の諸君。
我々の存在に気付かないとは・・・
バーランドにたどり着き気が抜けたのか
それとも それほど重要な探し物かね?
ダンタレス
思った以上に執念深いな 帝国軍
我々が 大人しく戻るつもりでも
易々とは通らせるつもりはないか?
ガーゼル
帝国内で暴れ放題に暴れておいて
大人しくだと・・・ほざきおるわ。
シンビオス
・・・・・・。
ガーゼル
聞けぬぞ・・・共和国軍が皇帝を誘拐し
帝国に宣戦布告したのが始まりなのだ
帝国は断固として それを許さぬまで!
進め 帝国の精鋭でなるガーゼル軍よ
シンビオス軍を 蹴散らしてしまえ
1人たりとも 共和国に戻らせるな!
ダンタレス
ジュリアンを捜索するつもりだったのに
まさか 帝国軍の待ち伏せに合うとは
・・・もちろん戦うしかありませんね。
シンビオス
・・・・・・。
ベネトレイム
ジュリアンの行方も気がかりだが
そのために全滅するわけにもいかぬ。
ガーゼル将軍との戦いでは注意せよ
ガーゼルは歴戦を勝ち抜いた強者だ
きっと何かを仕掛けているはずだ。
ガーゼル
かかったな シンビオス軍!
ベネトレイム
何だと・・・。
エキュアル
降伏するのだ シンビオス軍・・・
ベネトレイム様を渡してもらおう。
ダンタレス
はっ その声は・・・
エキュアル将軍・・・。
エキュアル
帝国軍に倒されてくれていれば・・・
こんな形で再会せずにすむはずだった。
ベネトレイム様を渡せ シンビオス
できれば・・・お前を倒したくない。
ダンタレス
寝返ったのか エキュアル将軍?
ガーゼル
寝返ったとは 人聞きが悪いな
将軍は志に従うことにしたまでよ
さあ 答えはどうだ シンビオス。
シンビオス
・・・・・・。
エキュアル
我々が理想の元に建国したアスピニアも
結局 真の平等は作り得なかったのだよ
新しい国という組織を作っただけだった。
我々はそれら全てを無に帰すつもりだ
そして 新しい秩序を構築するのだ!
ベネトレイム
帝国の力を借りてか エキュアル・・・
まだ我々の志は半ばではないか・・・
なぜ性急な結論を求めねばならぬのだ。
エキュアル
もう口車には乗れぬぞ ベネトレイム様
貧困の極みにある共和国の臣民を見ろ
第2の帝国に成り下がった現状もだ!
あなたの言葉を信じて待った結果どうだ
何が・・・どのように変わったのだ!
ガーゼル
エキュアル将軍 ヤツの手に乗るなよ!
時間稼ぎはそこまでだ シンビオス
武器を捨て降伏してもらおうか・・・
そして ベネトレイムを引き渡せ!
はい
シンビオス
・・・・・・。
ガーゼル
ふむ やけに聞き分けが良いな・・・
その手には乗らぬぞシンビオス
何か策を用意しておるのだろう!
いいえ
シンビオス
・・・・・・。
ガーゼル
どこまでも 逆らうつもりらしいな
・・・答えはわかりきっていたがね。
エキュアル
チャンスを棒に振るなら やむを得ぬ
我がエキュアル軍よ 進軍を開始せよ!
ダンタレス
し しまった 伏兵か?
ガーゼル
どういうことだ エキュアル将軍?
エキュアル
そ そんなバカな・・・
どうした・・・エキュアル軍
シンビオス軍の退路を断て!
ガーゼル
おお 見ろ やっと現れたぞ
これで勝ったも同じだ・・・
どうした・・・エキュアル将軍?
エキュアル
おかしい 作戦と違う・・・
全軍が現れる手はずなのだ。
メディオン
それは私のためだ ガーゼル将軍!
ガーゼル
そ その声はメディオン・・・王子。
メディオン
新しい秩序のため 犠牲を強いるとは
・・・それで理想国の建国が成せるか
目を覚まされよ エキュアル将軍!
グランタック
見損ないましたぞ ガーゼル将軍
共和国の内乱軍と 裏で手を結び
共和国王の抹殺に加担されるとは!
ガーゼル
だまれ グランタック・・・
貴様ごとき馬の骨に何がわかる!
キャンベル
将軍の心 私ごときにはわかりませぬ
これが 日頃言われる帝国騎士道なら
その精神 見習いたくもありませぬ!
ガーゼル
ぐぬぬ キャンベル 口の減らぬヤツ
待っておれ シンビオス軍を倒した後
理想国の人柱に してくれるわ!
エキュアル
そこの者は シンビオス軍に追い討ちを
残る者たちはメディオン軍を討つのだ!
メディオン
こちらの共和国軍は まかせてくれ
君はヤツらを討つのだ シンビオス殿!
ベネトレイム
加勢を頂きかたじけない メディオン殿
ヤツらは勢いを削がれたぞ シンビオス
このチャンスを逃さず 一気に勝負だ!
エキュアル
ヤツらが橋の中程までやってきたぞ
このままでは我らが危なくなる・・・
吊り橋のロープを切れ ガーゼル将軍。
ガーゼル
いい気なものだな エキュアル将軍
それで死ぬのが我が部下だけだから
勝手なことも言えるというものだ。
軍を失い 共和国に取り残された私は
何を頼りに建国に参画すれば良いのだ
ふざけるな ロープは絶対に切らせぬ。
エキュアル
こうなれば・・・問答無用。
ガーゼル
させぬぞ エキュアル!
エキュアル
ガ ガーゼル・・・貴様・・・
お 堕ちる・・・助けて・・・。
ガーゼル
ばかめ いずれ始末するつもりだった
それが・・・早まっただけのことだ。
エキュアル
そうか そうであったか・・・
このエキュアル 一生の不覚だ。
ガーゼル
邪魔者は消えた 次はシンビオス軍だ
このガーゼル自ら 劣勢を跳ね返してくれる。
戦闘終了
ダンタレス
メディオン王子と供の方々
重ね重ねのご助力かたじけない!
何と礼を申し上げたら良いものやら。
キャンベル
それは お互い様というものだ
シンビオス軍からの伝令のおかげにて
我らの取るべき道も決められたのです。
メディオン
そうだ うっかりするところだった
お預かりしていた 大事なお仲間を
お返ししなければ なりません。
シンテシス
帰っちゃうのね・・・ゼロ・・・。
ウリュド
ゼロは メディオン隊にとってみると
ただ1人の飛行兵だからなあ・・・
いなくなると 戦闘がつらくなるな。
エルダー
頼りにされているじゃない ゼロ!
ゼロ
姉さん・・・。
エルダー
でも あなたにも役目があるわ
乱れた共和国の秩序を取り戻すため
やることが  沢山あったはず・・・。
シンビオス
・・・・・・。
メディオン
お心だけ頂くよ シンビオス殿
貴君らのこの先の難問を思えば
この上 好意に甘える訳にもいかん。
ベネトレイム
メディオン殿は これから南に下られ
バーランドの町に行かれるおつもりか?
バーランドに行かれた その足で・・・
エルベセムに向かっては頂けまいか?
グランタック
聖地エルベセムに・・・ですと・・・
あそこで何か・・・あるのですかな?
ベネトレイム
知られてはいないが・・・ブルザム教は
エルベセムと対極の悪しき邪教なのです。
ヤツらにエルベセムの鬼門の守りを
・・・守護像を壊されてしまいました。
グランタック
仮面邪教ブルザムがそんなことを・・・
わかりました 必ず見てまいりましょう。
ベネトレイム
君は どうする・・・カーン
もちろん メディオン軍と共に
エルベセムに行くつもりであろう?
カーン
エルベセムは心配です 心から戻りたい
だが 私には与えられた使命があります
だから・・・エルベセムには戻りませぬ。
メディオン
お名残り惜しいが そろそろ出発します。
シンビオス
・・・・・・。
キャンベル
メディオン軍は 急ぎ南に進路を取り
山脈を越え バーランド首都に向かう。
シンビオス
・・・・・・。
ベネトレイム
傷ましい死だったな・・・シンビオス
しかし おのれを貫いたエキュアルを
今は 希代の猛将としてしのぼうぞ・・・。
ある意味で 幸せだったかも知れぬぞ
志のために散った・・・エキュアルは。
シンビオス
・・・・・・。
ベネトレイム
エキュアルは 我々と違う道を選んだが
私も お前の父上も 将軍も同じだ
志のためには 命を捧げているのだよ。
ダンタレス
ベネトレイム様も コムラード様も
共和国の支配階級を廃そうとしたため
何度となく 命を狙われてきました。
ベネトレイム
多くの理念の対立がひとつになる時
どうしても避けられぬ流血もある
人間とは・・・何とも愚かなものだ。
だから 共和国をまとめねばならぬ
一刻も早く 流血が終わるようにだ
そのため 後少しだけ力を貸しておくれ。
さて 我々も急ぐとするか・・・。
ダンタレス
そうでした みんなが待っています
ベネトレイム様の ご無事な姿を・・・。
エルダー
暗くなる前に 峡谷さえ抜けてしまえば
危険地帯は 終わったも同然ですわ。
カーン
聖地エルベセムへ行くのか・・・
彼らだけで行かせて良かったのか?
せめて宝珠を授けるべきだったか。
劣性とはいえ強敵だったヒュードルを倒すことで クアースに平和を取り戻したシンビオス達は フランツ将軍を破り帝国領を後にしたのだった パーランドの守護像を壊したスピリテッド軍を倒し 共和国本土に今一歩の一行を待ち受けていたのは エキュアルとガーゼルという列強の2将軍だった 切り替えポイント線以来のメディオン軍の支援は この激戦に大いなる勝利と新たなる信頼を生んだが 別れる両軍は知らない 次なる試練が待つことを。

第三章 狙われた守護像 完